RUN



彼が走る理由を私は知っている。

一週間後にある大会。

決して大きい大会ではない。

それでも彼がこのトラック走る最後の理由。


その為に彼は一人走る。





彼は特別速いわけじゃない。

入賞した事は無いし、他の部活で彼より速く走る人もいる。

おそらく彼自身も才能が無いと思っているだろう。




それでも彼は今日も走る。

地球の重力に逆らって、風を切り、太陽が映し出す影と一緒に。


前へ前へ、
0.1秒でも0.01秒でも、
少しでも速く走る。



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