ウブ恋ー君は照れ屋なヤンキーくんー
外の蝉の鳴き声と、どこからか入る心地よい風。
誰もいないこの教室は、私たちだけの空間。
ねぇ、椿くん。
早く言って。「好きだ」って。
そうしたらあたしだって「大好き」って言うよ。
抱きしめてくれるのも嬉しいけど、伝わるけど、あたしは椿くんの口から気持ちを聞きたいよ。
「…椿くん」
「ん?」
「言ってくれないの?」
少し体を話して目を合わせて話すと椿くんは一瞬固まって、不自然に目を逸らした。
待ってるのに。
どうせ言わなくてもわかってるだろ?って言うんだ。
「……わかるでしょ?」
ほらね、そーやって肝心なことは言わないの。
「わかんない」
「…え」
「口で言ってくれなきゃわかんないっ」
「え、ちょ、あいだ…」
椿くんの抱きしめられていた腕を解いて抜け出して離れると、椿くんは焦るようにあたしにもう一度近づいた。
「言ってくれないんだったら触るのも抱きしめるのもチューするのも駄目だから!」