君といれたら
「い…つき?」






静まり返った教室。





そこにいたのは、幽霊ではなく…。


昼間本のことで俺を罵っていった樹だった。







そういえば…結局本渡してなかったなー。







…じゃなくて、何してんだコイツ?







「寝てんのか?」






一歩一歩彼女への距離を縮めていく。





当の本人は、そんな俺に気付くことなく机に突っ伏したまま。







「いつきー。起きろー」




起こそうと声をかければ、「んー」という声とともに樹の顔がこちらを向いた。







「…え?」




その顔に、ハッとする。






…涙の…跡?




頬に残る、僅かな濡れた証。







ズキンッと、かすかに感じる胸の痛み。







…何だ?





それをかき消すかのように、俺は彼女の頬へと手を伸ばした。






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