貴女はシンデレラ、私はジュリエット
あの子
「小さい頃、ロミオとジュリエットを観て号泣したことがあるの」
ある日のカフェテラス。
私と向き合うように座るのは、美しい友達。
私の、親友。
「それからあたし、ジュリエットは少し好きになれないんだ」
苦い笑顔であの子はそう言った。
色素の薄い、綺麗な髪を靡かせて。
「どうして?素敵じゃん、ロミオとジュリエット」
コップに刺さるストローでくるくると氷を掻き混ぜながら、私は言った。
うーん、と目を細めるあの子。
長い睫毛が小さく揺れた。
「だって、ジュリエットは幸せなれないもん」
「そう?」
「ロミオと結ばれないから」
愛する人と結ばれないなんて、悲しすぎるじゃん?
頬杖をついて小さく笑うあの子は、とても美しかった。
その仕草だけでも十分、絵になってしまうくらいに。
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