貴女はシンデレラ、私はジュリエット
「…あっ、」
ふとあの子が、嬉しそうな声を零した。
どうしたの、なんて聞く暇もなく、その理由を知る。
「ごめん、待たせた?」
「…………、」
現れた、私の幼なじみ。
携帯で時計を確認すると、時間は11時ぴったり。
私には見せたことのないような、優しい笑みをあの子に向けている。
「おー、お前もいたのかよ」
「…いちゃ悪いワケ?」
私だって好きで来た訳じゃない。
『彼と出かける前に、少し喋りたいな』って言ったのは、あの子だよ。
そう言おうと口を開く前に、あの子は言葉を発した。
「あの、あたしが、ね、お話したいって言ったから来てくれたの」
ごめんね。
そう言って眉を下げるあの子。
…あぁ、そんな言い方じゃ、私が悪者になってしまうじゃないか。
でも、そんな仕種でさえも、絵になってしまうなんて。
羨ましいを通り越して、妬ましくなる。