たったひとりの王子様 [完]
「大丈夫か、明美?」
「…ふぇっ、ぐすっ…う、うん…ひくっ」
家にはいって、由宇のぬくもりに包まれた瞬間、涙があふれだした。
怖かった。
金井くんが、金井くんじゃなかった。
まるで…知らない、人みたいだった。
金井くんだったとしても…あたしの背中をおしてくれた、金井くんじゃない。
「あいつ…なに考えてんだ?」
由宇の疑問も、あたしはこたえられなくて…。
二人で抱きしめあったまま、話していた。