続②・絶対温度-私の定義-

「…おまえな、」

呆れたように笑ってから「ま、いいわ」と関谷はあたしの手をとる。その動作は自然で、何の違和感もないから、時間差で急激に意識してしまうからやめて欲しいのに。

「冷てー手」


関谷の手は温かい、温度がどう、とかじゃなくて。


「悪かったな」


ギュと握られた関谷の温度があたしに伝わって、不本意に胸がキュウと音を立てる。


カップルの心理描写まで考えてしまう─────それもこれも、関谷、この男が今まで一番縁遠いその事象を難無くあたしに与えるから。


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