続②・絶対温度-私の定義-
繋がれたままの手は関谷のコートのポケットの中で徐々に熱を持っていく。
「ねぇ、もう手、離して」
今年28になった。手を繋いで人波を歩くだけの勇気を持ち合わせていない。関谷は眉を僅かに上げて悪戯に口元を曲げる。
「無理」
「無理って、あんたね」
「これくらいさせろよ」
面倒くさそうに、だけどどこか面白がる口調はいつもと変わらない。
簡単に、あたしの温度を上げてしまうそんな不可思議な現象は今も変わらず有る。