続②・絶対温度-私の定義-
そんな事を考えていると、単調な電子音が鳴って、関谷が携帯を耳元にあてる。
『…ああ。…は?無理。…面倒くせー。……却下』
それで会話が成立するのかしら。ワァワァと『秋川さんが、』とか『とにかく早く来てくれ』とかそんな声がスピーカーから漏れている。関谷の最後の台詞からすると恐らく相手の要望は軽く無視だ。あたしは関谷を見上げた。
「関谷」
「…なんだ?」
無造作な黒髪は出会った時よりも襟足を長くした。冷たい感じのする切れ長夜色の瞳は光に透ける事なく深い。
突き放した雰囲気に気怠い感じはずっと変わらない。