続②・絶対温度-私の定義-
「仕事の電話じゃないの」
『秋川さん』最近関谷が電話越しにその名を漏らすのをよく聞く。関谷が今設計を受け持っている人、多分。
「別にいい」
「よくないでしょ、あんな一方的な会話じゃ、それに携帯鳴ってるけど」
リリリ、と無機質な音を出す携帯に関谷は明らかにその色を不機嫌で染めた。
「無視してないで、取れば」
このままだと関谷は確実に携帯の電源を落とす、そんな気がして関谷のポケットから無理矢理携帯を取り出す。
「……ハァ、おまえ分かってんの?仕事になるぞ」
切れ長の瞳が細まる。凶器みたいな視線は確実に不機嫌で、正直そのオーラは冬には肌が痛いからやめて欲しい。あたしが何をした。