続②・絶対温度-私の定義-
「呑気に歩いてないで早く行きなさいよ」
仕事なら仕方ない。誰でも平等に休みがある訳じゃないし。
今日でなくても一緒にいられる、そんな当たり前をくれるあんたがいれば、別にいい。口には絶対出さないけど。
「…怒れよ、馬鹿」
関谷が眉を曲げる、また不機嫌。
「なんで?怒る理由ないじゃない。仕事でしょ」
「……本当、可愛くねー」
無愛想に呟いた関谷は、また威圧感を重めながらスタスタと歩いていく。なんなんだろう、この男は。そんなに仕事がしたくなかったのか。反抗期の子供みたいな関谷の背中を見ながら、離された指先が少し冷たかった。