続②・絶対温度-私の定義-
そんなため息を掻き消すかのように携帯が振動する。ディスプレイには、『関谷』と表示されていて、一瞬幻覚症状かと思ったあたしは末期だ。
「────どこにいるの?」
『ぶ、開口一番それかよ?』
可笑しそうに笑う低い声は聞き慣れた響きで何となく安堵する。
「笑ってないで、寒いんだから」
なのに、可愛い言葉ひとつ言えない、それがあたしなんだから仕方ない。
『悪い、渋滞にかかった。もうすぐ着くから』
渋滞、か。あたしはかじかんだ指先に息を吹き掛けて、分かった、と返事を返す。
通話が終わって、携帯を鞄に片付ける瞬間にまた振動を感じてあたしは思わず怪訝な顔でまた耳にあてた。