続②・絶対温度-私の定義-

『Merry christmas!!』

あたしが何か言葉を発する前に届いた柔和な声。声だけは良いのに、


『May I ask you out?』(デートに誘ってもいい?)


キザにならない完璧な発音。それでもこの性格はどうにかならないのかしらね。


「Sorry,I have a boyfriend」(ごめんなさい、彼氏がいるの)


『言い切るねー、妬けるんだけど』

クスクス笑いながら耳元をくすぐる声に、受話器の向こうの表情が容易に想像出来て眉間にシワが寄った。


「…なんですか、山都さん」

『冷たいねー?デート中だった?俺の予想じゃ待ちぼうけしてる最中だと思って』


暇つぶしになるでしょ、と軽く言う。ならないし、余計なお世話だ。


『むしろデート中なら大歓迎だし?邪魔しておこうっていう可愛い悪戯だから』


「可愛くないですよ」


あたしの不機嫌窮まりない声にも、山都さんは気分を害する様子もなくまた楽しそうに笑った。


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