続②・絶対温度-私の定義-
『声聞けたから我慢しようかな』
サラリ、とそんな言葉を口にするこの男は本音も嘘も、全く掴めない。掴む必要性も全くないのだけれど。
「冗談ばっかり言ってないで、さっさと仕事して下さい」
この間社用で会った時、『クリスマスは仕事』と言っていた筈。
『心外。いつでも本気なんだけど』
トーンの変わらない口調が飄々と言ってのけて、ため息を吐けば、携帯の向こうの相手はクスクス笑った。
『────Good night.』(良い夜を)
切れた通話画面の表示を見ながら、眼鏡に手をあてる。
なんだったんだ、
本当に、あの人はよく分からない。
本気、とは一番掛け離れてるくせに。