彼の二番目。
変わるはずが無いのに圭の背中は何だか少し小さく感じた。
抱きしめたい…。
そんな衝動にかられて自然と伸びる手。
だけど我慢して手を引っ込めた。
今は触れちゃいけない、そんな気がした。


「…ごめんね、圭」今にも消えそうな声で圭の背中に言えば、
「芽依のせいじゃない」
と言う、いつもと変わらない声。

だけど、何かを我慢しているのが私には分かった。
幼なじみだもん…。


「やっぱり変更」
と言う言葉に俯いた顔をあげる。

「今日は帰る」
そう言った圭は廊下をUターンし、ゆっくりと来た道を巻き返す。

「…圭?」
と不思議そうに尋ねれば、頬を抑え、
「こんな顔じゃ教室に入れない」
と言い私の腕をひいて歩いた。

やっぱり暖かい手。やっと安心出来た。
しばらくすると、私の家の隣にある圭の家についた。

手慣れた手つきで圭が鍵を開ければ、広々とした玄関が私の目に映った。

「入って」
と私の腕を引っ張る圭。
そんな圭に急かされ私は急いで圭の家に上がった。

「おじゃまします」と言えば、
「今、誰も居ないから」
と言う、やっぱり冷静な口調が耳に入った。

二階へと繋がる階段を上がれば目の前にあるのが圭の部屋。
久しぶりに上がった圭の部屋は、当たり前だけど、もうおもちとかなんかなくてスッキリとしていた。

子供の頃、見た圭の部屋の面影は全く無い。

「そこ座って」
と圭が指差したベッドに戸惑いながら座る。

「飲み物、お茶でいい?」
と言う圭の口調に私は、こくんと頷いた。

すぐに差し出されたお茶を遠慮がちに受け取った。

お茶を一口、飲んだ圭は少し間を開け私の隣に座った。

「…玲の事、気にしてる?」
と言う圭の言葉に戸惑いながら、しっかりと頷いた。

「だよな…、ごめん」
と言い圭は私の頭を優しく撫でた。

「…私がいけないんだ。圭に告白なんかしたから…」
そう言うと圭の手の動きは止まった。

「ごめん…」
急にそう呟いた圭を不思議に見れば、悲しそうに眉を下げている圭の顔。
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