黄昏の館
気味が悪くて、足早にそこを去ろうとしたとき、それは目に入った。
点り始めた街灯の下に、しゃがみこむ、
(女の子?)
ぶかぶかの黒いコートを羽織り、膝を抱えているのだ。辺りに人通りはない。街から外れた通りだから、夜になれば獣が出ても可笑しくはない。
見たところ、歳は5〜6ぐらい。親…か、友達とでもはぐれたのだろうか。
何にしろ此のまま放っておけないと思い、その子に近付き、声を掛けた。
「こんなところで一人で、どうしたの?」
少女はしゃがんだまま、なにも答えない。近くに来て気付いたが、木の枝で地面に何か書いている。少女の柔らかそうな髪が揺れる。もう一度声をかける。
「もうすぐ夜だ。こんなところに居ると危ないよ。」
ぴく、と肩を揺らし、少女は枝を持つ手を止めた。ゆっくりと顔をあげて、此方に向ける。