黄昏の館
紅い、宝石の様な瞳が此方を捕らえたとき、息を飲んだ。が、光の錯覚だったようだ。琥珀色の瞳はおどおどと揺れている。

「誰かが通るのを、待っていたの。」

消えそうなくらいか細いソプラノで、少女は呟いた。きっと一人で不安だったのだろう。

「そうかい。さあ、街まで連れて行ってあげるよ。」

そう言いながら差し伸べた手。少女は戸惑いながらもその手に捕まり、立ち上がる。

「ねえ、お兄さん?」

「なんだい?」

「私が何故誰かが通るのを待っていたか、聞かないの?」

少女の問いかけに、緩く微笑んで応える。

「そんなの、聞かなくてもわかるよ。」

その言葉を聞いて、少女はまた押し黙る。それにしても、見掛けより随分と大人びた話し方をする子だ。

「………。」

「え?何か言ったかい?」

小さな声で、囃し立てるように何か呟いた彼女に、問いかけたそのとき。
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