わがまま娘の葛藤。
いつも利用する、某大手レンタルビデオ店。
クリアなプラスチックのかごに、CDやらDVDやらを入れていく。
その間にもあの映画はひどかったとか、あのアルバムは名盤だったとか。
そんな他愛ない会話が礼となら楽しい。
あたしの手と礼の手とが、知らぬ間に繋がれていて。
そんなこともほんのり嬉しかった。
「――礼?」
楽しい時間を遮る声。
可愛らしいソプラノボイス。
礼と同時に振り向くと、無駄に足が長い綺麗な女の人。
なんてゆうか…、うん。
綺麗。すっごい美人。
体のラインを出してる服も。
綺麗に巻かれたキャラメル色の髪も。
足の長さを際立てるピンヒールも。
ゴージャスでセクシー。
なのに、すごく上品。
女のあたしから見ても、惚れてしまいそう。
(あたしは断じて“そっち”の趣味はありません。悪しからず)
「すっごい、久しぶり…だよね。大学同じでも会わないもんだねー。ね、礼は、」
「――蘭」
“蘭”と呼ばれた彼女は、礼によって先の言葉を遮れた。
あたしの手を握る礼の手が、一層強くなった気がして、何にもないことのようには思えない。
「俺達、急ぐから」
「…そっか。彼女さん、も邪魔してごめんね」
そう言って微笑まれたので、あたしも軽い会釈をした。
その間にも、礼は「ちー、行くよ」と言って先を急ごうとする。
早足でレジに向かっていく礼に、あたしはついていくのに必死で。
だから、気づかなかった。
あたしたちの手が自然と離れていたことに。
その場に立ちすくんでじっとあたし達を見つめる、蘭さんの姿に。