わがまま娘の葛藤。
それぞれの想い
数日後、礼の風邪もすっかり完治して(相変わらずあたしの部屋に入り浸ってるけど)、いつもと変わらない日々に戻った。
スノボ旅行の計画も着々と進んでいる。
それでもあの日、蘭さんに言われた言葉がずっと引っ掛かっていて。
そんなあたしを礼もきっと不審がってる。
だから、毎日自分の家に帰るより先に、あたしの家に顔を出すんだろう。
ソファーに座って、テレビ鑑賞中。
テーブルの上で震えてるりんごのマークの便利な現代ツール。
明らかにあたしよりも近い位置に置いてあるのに。
本当に気づいてないのか。
分かっていて、出ないのか。
「礼、携帯鳴ってるよ」
『うん』と空返事をして、電話を切る。
見たくなかったのに。
視界に入ってしまったディスプレイ。
そこに表示されていた一文字。
――【 蘭 】
最近、よく蘭さんから連絡が入る。
電話だったり、メールだったり。
でも、礼は決まってそれを無視する。
基本的に紳士的で、女の子には滅法優しい礼が、なんで蘭さんにだけはこんなに冷たいんだろう。
取り巻きの子猫ちゃんたちにするように
、適当に優しくあしらったなら。
不安なんて、地球の裏側あたりまで吹っ飛ぶだろうに。
他の女の子と同じように接しないのは。
“初めて惚れた女”だから?