ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

どうにかしてはぐらかそうと思った。


学生時代だったら、軽く


『私、理想が高いの。兄が基準だから』


で、済んだことだけど、お客様相手だとそうはいかない。

悩みつつ、ちらりとパーサーの方を見たら。

……接客中だった。


こんなことでパーサーに助けを求めようとした私が甘かった。

きっとサービス業にはよくあること、なんだろうけれど、私にはそういう経験が決定的に足りない。


お客様は、DVDを手に、カウンターにもたれかかり、私をじっと見つめている。

単なる自意識過剰だったらいいのだけれど、きっと違う。


多分この人、私をナンパしようとしてるのよね?

男性客は、ちらりと周りを気にしている。

< 115 / 332 >

この作品をシェア

pagetop