ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
どうにかしてはぐらかそうと思った。
学生時代だったら、軽く
『私、理想が高いの。兄が基準だから』
で、済んだことだけど、お客様相手だとそうはいかない。
悩みつつ、ちらりとパーサーの方を見たら。
……接客中だった。
こんなことでパーサーに助けを求めようとした私が甘かった。
きっとサービス業にはよくあること、なんだろうけれど、私にはそういう経験が決定的に足りない。
お客様は、DVDを手に、カウンターにもたれかかり、私をじっと見つめている。
単なる自意識過剰だったらいいのだけれど、きっと違う。
多分この人、私をナンパしようとしてるのよね?
男性客は、ちらりと周りを気にしている。