ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

そう言って、パーサーが私の方へ向き直り、甘やかな微笑みを見せた。

また、心臓が高鳴る。

これは演技だって解っているのに、どうしても意識してしまう。

そのしぐさのひとつひとつが、私を混乱させる。


部下として、大切なんだって。

落ち着け心臓! 働け頭! 


「十勝で下船する前に渡されたこの名刺、ご丁寧にケータイの番号とアドレスまで書いてありますね。

ご自宅と会社の番号が印刷されているのに、ここまでされると『そういうこと』に疎い彼女でも、さすがに警戒しますよ」


そう言って、さっき私が手渡したばかりの名刺を、ポケットから取り出した。

……いつ渡されたのか、知っていたなんて驚きだった。


「……」


無言で私とパーサーを睨み続ける工藤さんに怯むことなく、パーサーは続けた。


「そんなに彼女が欲しいのですか?

単なる奥様妊娠中の浮気相手を探しているようにしか見えませんが。

彼女はそんな『安い女』じゃありません」



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