ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
「私は古風な人間なんです。
男の人と一緒に暮らすのは、結婚してからだって思っています。
百歩譲っても、結婚するって決めてから。
それが今回は、こんなことになっちゃったから仕方がないけれど……。
コウさんのこと、何も知らないままの私には、踏み出せない領域です」
「知りたい? 俺の事」
「もちろんです」
「知ってしまったらもう、後戻りできないけど」
「後戻りって、何ですか?」
「単なる上司と部下には、戻れない。
こんな話、ただの部下には聞かせたくない。
これを知っているのは、タケルと……ごく限られた人間だけだ。
タケルはある意味、俺と同じだった。
だから、奴との関係はずっと変わらない。
でも、裕香ちゃんは、タケルや俺とは違う。
俺のことが気になる、程度の気もちじゃダメだ。
俺に……本気で惚れてくれないと」