ハッピー・クルージング～海でみつけた、愛のかけら～

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演奏スタイルには、その『人』が出るとよく言われる。


お兄ちゃんの演奏は、いつも余裕があった。

それでいて、表現力豊かでアドリブも上手。

まだ子どもの頃から『憎らしいほど落ち着いている』なんて言われてた。


歌音ちゃんの演奏は、自由で大らか。

感情のままに弾きこなすから、安定感はないけれど、惹きつけられるの。


私の演奏は、真面目でまっすぐで型どおりだと評価される。

裏返すと『退屈』な演奏だということ。

私はそれがとても嫌だった。


でも、ちょっと意識して型をはずせば『どうしたの？』と言われ。

大胆に弾けば『持ち味の繊細さが生かされていない』と評価され。

結局、私のスタイルは『楽譜通りに弾くのが得意な、真面目でまっすぐの演奏』だということに落ち着いた。


心に響くような演奏ができないことへの焦りが、日々の猛練習に繋がったんだけど、やっぱり入賞止まり。


コウさんも演奏するのだとしたら、一体どんなスタイルなんだろう。

そんなことを考えつつ、無言でパスタを流し込んだ。