ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
私の頬から、涙が一滴、二滴、パジャマに沁み込んでいく。
コウさんがそっと拭ってくれながら、語り出す。
「話はこれだけじゃない。
裕香ちゃん、ここまで俺の話を聞いて、それでも本気になれるか?」
戸惑うような、ちょっと不安げな声だった。
こんなコウさんは、はじめてだと思う。
心配しないで、全部話して欲しい。
そんな気持ちをこめて、私の涙を拭ってくれた大きな手を、そっと両手で包む。
「本気じゃなかったら、今頃ここにいません。
私は古風な人間だって言ったじゃないですか。
結婚するか、結婚を決意する位好きな人じゃなかったら、一緒に暮らせません。
コウさんだから……ううん、コウさんじゃなかったら、嫌なんです。
ここに来る前に、私の心は決まっていたんですよ。
もう、何を聞いても、迷いません。
私の羅針盤は、コウさんと同じ方向を指しています。
コウさんの未来に凪が訪れますようにって、隣で祈っていたいんです」