ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
思わず、コウさんの手をぎゅっと握った。
そんなこと、気にしてたなんて。
「コウさん、まだ私のこと、そこまでリサーチしていなかったんですね。
工藤さんの時は、あんなに色々調べてたのに、何だか不思議」
「……裕香ちゃんが馬主の財力に惚れるのだけは阻止したかったからな。
十勝での休憩時間、君のピアノを聴いた後で、検索しまくったよ」
「やっぱり、そうだったんですね。
私が名刺を渡す前だったのに、妙に詳しかったから、変だと思ってたんです。
……それより、私の父の職業、ご存じですよね?」
「教育大学の准教授、だろ?」
「そうです。
ちなみに専門は『福祉政策』なんですよ。
父と母が出会ったのは、少年院でした。
ピアノ演奏の慰問に訪れた母と、そこで仕事をしていた父が意気投合したとか。
ね、そういう偏見、うちの両親にはありません。
仮にあったとしたら、今までの父の業績は全て砂上の楼閣になってしまうと思いませんか?
大丈夫。私の両親は、その人間の生い立ちより中身を重視しますから」