ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
照れ笑いを浮かべながら、コウさんが船のかけらへ手を伸ばした。
片手は、私の手を掴んだまま。
「そんな真面目なお嬢さんが、父に惚れて押しかけてきたんだってさ。
これをくれた時、ノムさんが教えてくれた」
私の掌を、そっと開く。
「面会の最後に、こう言ってくれたんだ。
『親父さんのような、勇気ある豪胆な男になれ。
周りから何を言われても、負けるな。
親父さんは決してお前の言葉に傷ついて死を選んだわけじゃない。
色んな大人の事情と……俺達船員の生活のためだったんだよ。
それから、お袋さんのような嫁さんをみつけるんだぞ。
海の男に惚れこんで、漁の間はしっかり家庭を守れるような。
そうやって、お前が幸せに暮らしていくことが、2人の願いだからな』って」
船のかけらを私の掌へ静かに置いて、囁かれた。
「まだ足りないかけらを、これから一緒に探して欲しい。
お互いを補えるような、幸せのかけらをたくさん集めよう」