ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

ゆらり、ゆらりと動く身体。

横になるとますます揺れを感じる。

気持ち悪さと苦しさで、額から冷や汗が流れる。


そんな時でも、頭の中は意外と冷静で。

『今、吐いてしまったら、ほとんど乗り物酔いの薬は吸収されずに終わってしまう』

なんて考えていた。


せっかくコウさん、ううん、黒田パーサーからもらった薬。

もう、頼れるのは薬とツボ押しだけ、かも。

何としてもこの乗り物酔いに耐えて、3航海しなくちゃならない。


使い物にならない新人で終わってなるものですか!

私は、こんなことでへこたれない。

負けるもんか、負けるもんか……。


目を閉じて、ツボを押しながら気合いを入れる私の耳に入ってきたのは、エルガー作曲『愛の挨拶』のメロディだった。

そして……。


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