ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
手には、オレンジ色の何かを握っていた。
「自分で押さえていたんだな。
今押さえているツボにこれを当てると効くはずだ」
そう言うと、また私の手を掴んだ。
手首にそのオレンジ色のバンドをきつめに巻いてくれた。
バンドの内側に、ツボを押す突起がつけられているみたい。
「酔い止めバンドだ。
本当はお客様用だが、特別にレンタルしてやる。
1航海終わる頃には、このバンドがなくても酔わなくなっているだろう。
これと薬で、何とか乗り切って欲しい」
私の様子を確かめるようにして、両手首に酔い止めバンドを付けてくれたパーサーが、最後ににやっと笑ってこう言った。
「君が来るのを、ずっと待っていたんだ。
途中で下船しようなんて、許す訳がない」
「えっ!?」
「君の考えていることなんて、お見通しだ」