ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
至近距離で合う、パーサーの眼。
顔は笑ってるのに、どことなく冷やかな視線を感じてはっとした。
本当に、何でも見透かされてしまうような眼だった。
「このまま足手まといになるくらいなら、下船しよう。
ひどい船酔いで働くどころじゃない……そんなところだろう」
「……」
本当に、お見通しだった。
どうして解っちゃうんだろう?
返事もできないほど、私はうろたえてしまった。
「何で解るのかって?
伊達に10年以上勤めてないからな。
君のような新人は、沢山いた。
出航する前に逃げ出す奴は、さすがにそれほどいなかったが、1航海終わって東京へ戻ったら、いつの間にか荷物まとめて逃げ出してた奴がいた……よくある事だ」