ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

よくある事、という言葉を聞いて、ちょっとだけ気が楽になった。

なんだ、私だけじゃなかったんだ。

そんな考えが、きっと顔に出てしまったんだと思う。

パーサーはますます厳しい眼で、私を睨んだ。


「そうだ。よくある事だよ。

ただし、それは『アルバイト』の新人にとってのよくある事だ!

君はこの会社の『社員』だという自覚があるのか?

うちのような船会社は、安全で快適なクルージングをするのが第一だ。

その一方で、企業として当然ながら、相応の利潤を追求する。

今の君は会社に利益をもたらすために、何ができる?」


話を聞きながら、胸が痛くなった。

私は『バイト』じゃない。

『社員』なのに、今のままだと……。


「すみません。私は会社に『損失』しか与えられません……」


あまりの情けなさに、パーサーの顔を見ることができなかった。

< 62 / 332 >

この作品をシェア

pagetop