ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
よくある事、という言葉を聞いて、ちょっとだけ気が楽になった。
なんだ、私だけじゃなかったんだ。
そんな考えが、きっと顔に出てしまったんだと思う。
パーサーはますます厳しい眼で、私を睨んだ。
「そうだ。よくある事だよ。
ただし、それは『アルバイト』の新人にとってのよくある事だ!
君はこの会社の『社員』だという自覚があるのか?
うちのような船会社は、安全で快適なクルージングをするのが第一だ。
その一方で、企業として当然ながら、相応の利潤を追求する。
今の君は会社に利益をもたらすために、何ができる?」
話を聞きながら、胸が痛くなった。
私は『バイト』じゃない。
『社員』なのに、今のままだと……。
「すみません。私は会社に『損失』しか与えられません……」
あまりの情けなさに、パーサーの顔を見ることができなかった。