ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
認識の甘さを指摘されて、顔から火を噴きそう……。
「損失、ね。
確かに利益の反対は損失だが、今回の場合、それはあてはまらない。
利益をもたらすことができない新入社員は、会社にとってマイナスか?
そうじゃない。今、君たち新入社員は会社から『投資』されているんだ。
未来のジャパン郵船という企業を背負って立つ人材に育てるための投資だ。
その投資は、いずれ大きな実を結ぶ。
こうして会社も成熟していくんだ。
君は投資に見合った成長を遂げられそうな人材として、入社試験に合格した。
たとえ、自分の目指す道とは違っていたとしても、もう逃がさない。
断るチャンスはあったのに、断らずに受けて立ったということは、その覚悟があるんだろう。
私にその覚悟をこれから見せて欲しい。
……期待して、今日まで待っていたのだから」
直視できない私の顔を、最後は覗き込むようにして諭すパーサー。
最後の言葉を伝える時だけ、眼が優しく見えたのは、きっと気のせいじゃないはず。
だって、あの夜の話と根本は同じだったから。