ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
ちょっと照れながら答えた。
「えっとね、結婚式場とかイベントとかパーティの……」
「コンパニオン?」
「ううん、ピアノやパイプオルガンの演奏。
たまに歌も歌ったりしてたんだ」
音大生のバイトの定番だった。
「そうだったんだ!
いいよね~、今度聴かせて!」
「うん、機会があれば、ね」
その時、頭上から冷やかな視線を感じて振り返ると。
「その前に、仕事だな」
タキシードを着たパーサーが、腕組みをして睨んでいた。
「はいっ!!」
また、見られたくないところを見られてしまった。
「ほら、1航海目だけだっただろ、船酔いは。
2航海目からはしっかり働けるな?」
そう言いながら、笑ってくれた。
たったそれだけなのに、どうしてこんなに嬉しい気持ちになるんだろう。
どうしてこんなにやる気が出るんだろう。
……どうしてこんなに、ドキドキするんだろう。