ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

ちょっと照れながら答えた。


「えっとね、結婚式場とかイベントとかパーティの……」


「コンパニオン?」


「ううん、ピアノやパイプオルガンの演奏。

たまに歌も歌ったりしてたんだ」


音大生のバイトの定番だった。


「そうだったんだ!

いいよね~、今度聴かせて!」


「うん、機会があれば、ね」


その時、頭上から冷やかな視線を感じて振り返ると。


「その前に、仕事だな」


タキシードを着たパーサーが、腕組みをして睨んでいた。


「はいっ!!」


また、見られたくないところを見られてしまった。


「ほら、1航海目だけだっただろ、船酔いは。

2航海目からはしっかり働けるな?」


そう言いながら、笑ってくれた。

たったそれだけなのに、どうしてこんなに嬉しい気持ちになるんだろう。

どうしてこんなにやる気が出るんだろう。


……どうしてこんなに、ドキドキするんだろう。
< 68 / 332 >

この作品をシェア

pagetop