ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

☆☆☆☆☆☆


夜、東京に着岸した船は、お客様が降りてすぐ、次の航海に備える。

清掃業者が入り、荷物が積まれるほんの3時間ちょっとだけ、私達に上陸許可が与えられた。

自宅に帰っても、往復するだけで終わってしまう。


「まどかは陸に上がるの?」


「うん、家で録画したブルーレイ取りに行こうかなって。

ちょっと働く気力を補充しなきゃね!」


まどかは某男性アイドルのファンで、彼が出ている番組を欠かさずチェックしているらしい。


「そっか。私はどうしようかな」


このまま自分の部屋に残っているのはもったいない気がした。

せっかくの『揺れないところ』へ行けるチャンスだから。

……結局、埠頭近くのお台場あたりで時間をつぶそうと考えた。


陸に上がる前は必ずパーサーへ報告することになっていると聞き、私とまどかは事務室へ向かった。

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