ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

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「ぼくの『レッド』は、ずっとここにいるの?」


お客様の乗船時間になってすぐ、ケージを抱えた親子がやってきた。

パパとママと、小さな男の子。

ペットケージ置き場へ案内すると、男の子はぐるりと周りを見て、不安そうな顔になった。

ここには窓はないし、Dデッキと駐車スペースであるEデッキのちょうど真ん中に配置されているため、エンジンの音も大きく響いている。

まだ他のペットは入っていないため、がらんとしていて殺風景。


「そうなの。ここには他のペットも来るから、寂しくないと思うよ」


明るく言ってみたけれど、男の子は納得していない様子だった。


「レッドもぼくのかぞくなのに、どうしてレッドだけここなの?

ホテルではレッドとおなじおへやにいられたのに!」


「ここは海の上だから、もし『レッド』が海に落ちちゃったら大変でしょう?

船の上では、ペットはこの専用のケージにいるのが一番安全なの」


「ぼくのケージにいれて、ぼくのおへやにつれてっちゃだめなの?」


「ごめんね。船の上では、ペットはここにしかいられない決まりがあって……」


「ふねなんてきらいだ! だからひこうきでいこうっていったのにぃぃ……」


……泣かれてしまった。

だから私も小さい子どもが苦手、だったりする。

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