ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

2時間後。

船は無事に出航し、お客様もそろそろお部屋でくつろぐ時間となった。

私は言われた通り私服に着替え、こっそりお客様のフリをしてラウンジへ。


静かにドアを開けると、お客様は年配のご夫婦が2組と、女性のグループが1組。


12時を過ぎたこの時間のラウンジ担当は、キッチンに2人、ホールに1人のはず。

……やっぱり、カウンターにいたのは黒田パーサーだった。


「いらっしゃいませ」


カウンターの中から、営業スマイルでお出迎えしてくれた。


「こちらへどうぞ」


カウンター席の中央に案内されてしまった。

他のお客様は、窓側のテーブル席で楽しそうに語っている。

いいのかな、私がこんなところにいても。

戸惑う私におしぼりとメニューを渡しながら、パーサーはまた営業スマイル。

最近、厳しい顔ばかり見ていた気がするので、笑顔を向けられると照れてしまう。


「どれでもお好きなものをどうぞ」


「本当に、いいんですか?」

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