*短編集*



「…散歩。和也は…部活帰り?」

「正解。…って、ひとりじゃ危ないだろ。送ってってやるから帰るぞ」

「…うん」


相変わらず過保護。

そういう所は昔から変わらない。

そう思うと、なんだか笑いが込み上げて来て、ついクスッと笑ってしまった。


「…なんだよ」

「なんでもなーい」


むすっとした声を出す和也。

私が笑った理由がわかってるらしい。

ムッとした顔で歩いている和也を見上げた。

昔は私のほうが大きかったのに…。

いつのまにか私の身長なんか軽く通り越してしまって、手の大きさも、なにもかも、私よりもたくましくなった。

それと同時にカッコ良くなっていって、モテるようになって…。

いっぱい告白もされているのに、どうして私なんかを選んだんだろ…。

私も咲月も同じ年月分一緒にいたのに、どうして咲月じゃないんだろう。

私なんてワガママで、可愛くないのに。

咲月みたいに優しくもなんともないのに…。

どうして…?


「…未来?」

「なに?」

「いや、ぼーっと俺の事見てたから…」


和也が少し赤くなって言う。

和也は、いつも私のワガママを嫌な顔一つせずに聞いてくれたね。

今ではもうそんな事もあまり無くなったけど。

もし叶うのならば…私の最後のワガママを、聞いてくれないかな。


「…和也」

「…なに?」

「…私、帰りたくない…」

「………え?」


ポカンとしてる。

そりゃそうだよね?

意味わかんないと思う。


< 16 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop