*短編集*
「…散歩。和也は…部活帰り?」
「正解。…って、ひとりじゃ危ないだろ。送ってってやるから帰るぞ」
「…うん」
相変わらず過保護。
そういう所は昔から変わらない。
そう思うと、なんだか笑いが込み上げて来て、ついクスッと笑ってしまった。
「…なんだよ」
「なんでもなーい」
むすっとした声を出す和也。
私が笑った理由がわかってるらしい。
ムッとした顔で歩いている和也を見上げた。
昔は私のほうが大きかったのに…。
いつのまにか私の身長なんか軽く通り越してしまって、手の大きさも、なにもかも、私よりもたくましくなった。
それと同時にカッコ良くなっていって、モテるようになって…。
いっぱい告白もされているのに、どうして私なんかを選んだんだろ…。
私も咲月も同じ年月分一緒にいたのに、どうして咲月じゃないんだろう。
私なんてワガママで、可愛くないのに。
咲月みたいに優しくもなんともないのに…。
どうして…?
「…未来?」
「なに?」
「いや、ぼーっと俺の事見てたから…」
和也が少し赤くなって言う。
和也は、いつも私のワガママを嫌な顔一つせずに聞いてくれたね。
今ではもうそんな事もあまり無くなったけど。
もし叶うのならば…私の最後のワガママを、聞いてくれないかな。
「…和也」
「…なに?」
「…私、帰りたくない…」
「………え?」
ポカンとしてる。
そりゃそうだよね?
意味わかんないと思う。