*短編集*
和也の事は好き。
ずっとずっと、小さな頃から。
だけど、付き合う事は…出来ない。
「…どういう事?」
「……私ね、引っ越すの」
「は…?」
和也が、訳がわからないとでも言うような声を出す。
「…どうして…」
「うちの両親…今度、離婚するの」
「………!!」
「それで、私はお母さんと一緒に住むつもり。だから…おばあちゃん家に引っ越すの」
「ウソだろ…」
「本当だよ」
ずっと、ここに居たかった。
ずっと3人で笑い合えると信じていた。
だけど、別れは案外あっけなくやってくるもので。
私は…
「でも…それで俺とは付き合えないって…どうして?遠距離恋愛だって、俺はできる覚悟はあるぞ?」
「………っ」
そうだね。
でも、私は
「私は…出来る自信がないの…」
和也の事が大好きだよ。
本当に大好き。
だけど、私が引っ越して。
近くにいなくなって…。
どんな事があるのかわからない。
もしかしたら和也に他に好きな人が出来ちゃうかもしれない。
滅多に会えないし。
お互いに自然消滅しちゃうかも。
そう考えると、不安で仕方なくて…。
「応えても、応えなくても、きっと向こうに行ったら、ずっと和也の事を考えてると思う。ずっと、忘れられないと思ったの。どっちにしろ同じなら、いっそ付き合わないほうがマシだと思った。でも…」