*短編集*
「バカ」
「…っ」
コツッと和也が私の頭を小突いた。
思わず和也を見上げる。
「…お前…泣いてんじゃん」
「……っ」
パッと下を向く。
見せないようにと思ってたのに…。
「確かに不安もあるけど。でも、俺は離れたからって未来の事を忘れるなんて出来ないし、それくらいの気持ちだったらこんなに何年もの間、未来の事を好きでいるなんて出来ないと思ってる」
「和也…」
「俺は、未来の事が好きだよ」
「……ふぇっ…」
「…泣き虫は昔から変わんねぇな」
「うるさいぃ…」
寒空の下、涙をこぼす私を和也はずっとギュッと抱きしめていてくれた。
―――――――
――――
「…気をつけてね」
「うん。咲月も元気でね」
「ちゃんと遊びに帰って来るのよ?」
「うん」
見送りに来てくれた咲月がちょっと涙ぐんでいる。
私も、目の前の風景がユラユラしてちょっと見えにくい。
「和也とは…上手くいったんでしょ?」
「…なんでわかったの」
「わかるよ。だって未来、なんか晴れやかな顔してるもん」
「そう…かな?」
「はにかんじゃって、かわいーっ」
「ちょ、可愛くなんてないってば」