かんのれあ番外編
「苗字で呼ばないで下さい!何の用ですか!」


顔面がくっつきそうになるが、ときめきの代わりに脅威を与えてくるのがコイツである。


まぁ、さっきまで泣きべそかいてたツラじゃ多少迫力に欠けるわけだが。


「へいへいすみませんねー。せっかく傘持って来てやったっつーのに、いらないんですかそうですかー」


「そんなこと頼んだ覚えはありません」


「あーそーっすか。じゃどーぞお帰り下さい」


「言われなくてもそうします、!」


入り口を開けた鏡華さんが、道路を叩きつける土砂降りを見てビビる。


「うわーっ、痛そー!鏡華さんカワイソー」


こんな中傘も差さずに歩いてまるで失恋女じゃーん、と言ったら視線で脳天をぶち抜かれた。


いや、今のはマジで怖ぇ。


「……いくらですか」


「は?」


「そのビニール傘!いくらしたのか聞いているんです!」


「え、そんなん覚えてねーよ」


ちょ、その目マジやめろって「……三百円」


傘を奪うように取られると同時に、百円玉三枚が俺の手の平に落とされた。
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