かんのれあ番外編
「機会についてもまた然り。むしろ、それを土台にしてのし上がってやるくらいの図々しさがないとやってけないでしょ、人生なんてモンは」


今の所は俺が企画書を覗いたことは黙っておくことにして(後で宮城野にでも返しておけばいいだろ)、作家を含めた広い意味での人生論を述べてみた。


鏡華さんはというと、「ウザイです」


あ、そーっすか。


そんなことを言ってから、ようやく傘を開いて入り口を後にする。


と、一歩外に出た所で振り向いた。



「……それ」


言って鏡華さんは、入り口にある来客用の傘立てを指差す。


「明後日に編集部で打ち合わせがあるので、その時傘に私の名前の札でも付けてそこに差しておきます」


「うん」頷いたものの、

「で、それが何?」


「だから、その時に傘は返します。名札を目印に取って行って下さい」


「あ?何ソレ、意味がわかんないんですけど」


つーか今、金払ったろ。


じゃあせめてと百円玉を握った手を差し出した手も振り払われる。


更に、鏡華さんはただでさえ不機嫌だったツラを歪めた。



「さっき言ったはずです。山崎さんにだけは借りを作りたくないと。……それでは」



言って鏡華さんは土砂降りの中に姿を消して行った。
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