花嫁と咎人
Chapter.0

女王と騎士


石畳で出来た冷たい床。
頑丈な鉄格子。

ちいさなランプ。


どうして私は、こんな所にいるのだろう。


考えれば考えるほど、異質な寒さに凍え、
涙がとめどなく零れ落ちては、固く結んだ唇からこらえていた声が漏れる。

やがてそれは嗚咽になって、地下牢一杯に響いた。


「私は…、私は、飾りでしかないのね…」


分かりきった事を口にする事が、こんなにも辛いものだとは思わなかった。

地下牢が、この国が…こんなにも冷たい所だなんて知らなかった。


…そう、私だけ。
私だけが何も知らなかった。


父も母も…祖父も祖母もきっと知っていたであろうこの穢れを、私は幼さから知る由もなく。

優しい母はこの牢で最期を迎え、
偉大な父は毒を盛られて逝った。

信頼していた者さえも…悪の手から逃げ切る事はできずに…

私の手の平から零れ落ちていった。


残された私は…所詮国の装飾品でしかなくて。


嗚呼。
かつて母が死んだこの牢で…とうとう私も死ぬのだろうか。


汚れたドレスの袖を握り締めながら、私は腕の中に顔をうずめ…


只…ひたすら嘆いた。



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