花嫁と咎人
ただ、フランの残像ばかりが脳裏をよぎる。
「っ。」
逃げるようにして俺はバスルームから立ち去った。
変だ。
あいつと会ってから、俺は変だ。
するとその時、横から現れたオズと思いっきりぶつかってしまい、
ひっくり返るようにして床に倒れこむ。
「痛ってー!」
「…痛いのはこっちの方だ…!」
背中をさすりながら、俺が立ち上がると…
「……へ?」
なにやらオズは俺の顔を見たままあんぐりと口を開けていた。
何だよ。
思わず眉間にしわを寄せると、何かが頬を伝ったような感覚に襲われる。
「ハインツ、お前…なんで泣いてんの?」
…え、
オズに言われ慌てて頬を触ると、水のようなものが手について。
それと同時に…笑いがこみ上げて来た。
でも…どうしてか、素直に笑えなくて。
「…多分、少しおかしくなってる。」
涙を拭い、手を額にあてると…自嘲気味に俺は言う。
そんな俺をオズは奇妙な面持ちで見ていた。
「…へ、へえ…。凄く気持ち悪いよ。」
やっぱりな。
口に出そうとしたけれど、俺はただ苦笑するしか出来なかった。