花嫁と咎人
家に帰ればまた一仕事待っている。
「王子様、大丈夫だといいなぁ」
そう言って二人は草原を歩いていった。
◆ ◇ ◆
冷たい牢の中。
「だーかーら。知らないっていってるだろ?!」
タリアは盛大に憲兵に怒鳴り散らかすと、足を机の上に置いた。
「この無礼者が!」
憲兵が唾を飛び散らして叫ぶが、タリアの態度は一向に変わらず。
「いい加減、このカビ臭い牢から出してくれないかねぇ。たまったもんじゃないよ。」
ぶつぶつ言いながら、大きく欠伸をする。
「…貴様ァ!早く答えろと言ってるんだ!」
それでも憲兵達はうるさいままで。
よくも朝からこの調子で尋問できるもんだと、敵ながらタリアは感心した。
その粘り強さをこんな馬鹿げた尋問に使うんじゃなくて、もっと他の事に生かせばいいのに。
と今日数えただけで50回は思っている。
ここに放り込まれてから、毎日朝から晩まで尋問尋問尋問。
聞かれるのは「女王陛下はどこに行った」の1パターン。
いい加減飽き飽きしてきた。
何回「知らない」と言えば諦めてくれるのだろうか。
否、諦めてはくれないか。
タリアが溜め息を吐いた時…突然憲兵達がざわめきはじめた。
そしてコツコツとブーツの底を鳴らして現れたのは…あの、オーウェンとか言う奴。
「…どけ、ここは僕一人で十分だ。」
憲兵達を牢から追い出し、代わりに椅子に腰掛ける彼。
金色の目でタリアを見回すと、小さく口元を歪めた。