花嫁と咎人
視線を泳がすことなく、眉を顰めて辛辣な表情を浮かべる彼。
…エルバートが言う事は間違っていない。
きっとラザレスは何かを企んでいる。
その事は間違いないだろう。
ならば一体、何を企んでいるというの…。
「…そう言えばエルバート…、私ラザレスに結婚しろと言われたの。彼の息子と。…何度も念を押されたわ…。病の件と何か関係があるのかしら。」
エルバートはそれを聞くなり、
「とりあえずお部屋に戻りましょう、姫様。」
そう言って半ば強引に私の手を引き、部屋から連れ出した。
「…エルバート?どうしたの?」
だが、私の問いかけに答えることなく、エルバートは前を向き、ただ足を進めるばかりで。
「エルバート!」
少し声を張り上げると、彼はしっと口元に指をあてた。
「部屋の外で、何者かの気配がしました。話を聞かれていたかもしれません。早く御自室に。続きはそれからです。」
―………
―…。
部屋に着いたが否や、エルバートは厳重に内側から全ての鍵を閉め、隅々を見渡した。
異常が無いことを確認すると、ようやく彼の表情に落ち着きが戻る。
「…申し訳ありません。何か起こってからでは遅いもので…」
「そんなことないわ、私、全然気づいてなかったもの。ありがとうエルバート。」
私は近くのベッドに腰掛けると、小さく息をついた。
「それにしても、誰かが盗み聞きをしているなんて…一体ここはどうなってしまったのかしら…。」
そんな私の側に寄り…エルバートは口を開く。
「恐らく…ラザレスの仕業かと。」