花嫁と咎人
「女王陛下は、どこへ。」
…またか。
タリアはフンと鼻を鳴らすと、面倒くさそうに言う。
「…知らないよ。」
それを聞いたオーウェンは、
「成程。」
小さく笑みを浮かべると、一人の憲兵を牢の中に連れ込んだ。
そして何を思ったのか、自らの剣を引き抜くと…その憲兵の腕めがけて振り下ろす。
「…っ!」
憲兵が発した断末魔の悲鳴が響く中、タリアは目を見開いて硬直した。
一体、何をしてるんだ…!
突然の出来事に他の憲兵達も悲鳴を上げ、驚き…怯えている。
しかしオーウェンはその声をさも楽しんでいるかのように、血に塗れた剣を舌で舐めると、微笑を浮かべた。
「これでも、知らないと?」
まるで悪魔の所業にタリアは声も出ない。
「言わなければこいつの両腕は無くなる。足も、胴も…首も。どんどん…無くなる、嗚呼可愛そうに。貴女が言わなかったせいで。」
「…アンタ、悪魔だよ…!」
精一杯搾り出した言葉も、オーウェンの笑みによってどんどん小さくなって。
「大層な褒め言葉、大いに結構。ミス・ヴァレンティン。」
「………。」
「いつまで大口が叩けるか、見物だな。」
そして彼は同じ問いを繰り返した。
「女王陛下は、どこへ…?」