花嫁と咎人
その姿に少々彼は驚いたような表情を見せたが、やがて小さく笑い始めた。
「何それ、お姫様らしくないじゃん。どうしたの。」
だけど、私はその時決意していた。
もう私は鳥篭の中の姫様じゃない。
ちゃんとハイネと向き合わなければいけないわ。
「私、今日で女王は封印します。今日から一人の女として!」
そしてティーカップを振り上げ、こう叫んだ。
「ハイネの秘密を暴くわ!」
数時間後。
「…アホか。」
部屋から出てきたハイネに、早々呆れ顔をされてしまって。
「何が俺の秘密を暴く、だ。馬鹿言ってんじゃねぇよ。」
そういう彼は何処か調子が悪そう。
何回も息を吐いては、額に手をあてる。
心配そうにオズが彼に視線を送っているが、ハイネは「そんな顔で見るなよ。」と苦笑を浮かべ、バスルームの方へと言ってしまって。
そんな中。
私は一人、置き去りにされているような感覚に襲われた。
私だけ、何も知らない。
きっとそれだけが、今、唯一の真実。
そんな真実なんて、要らないわ。
無性に心が疼いて…自然と視線が下へと下がる。
何かしら。
これ。
だけど、とうとう分からないまま。時間は経ち…激しい雨が次第に止み始めた。