花嫁と咎人
◆ ◇ ◆
思わず、私は後ろを振り返った。
今、誰かが私の名を呼んだ気が…。
すると前を歩くハイネが振り返り、「何やってんだよ」と私に声をかける。
「…あ、いいえ。なんでもないわ。」
気のせいねと首を振り、私は再び足を進めた。
流石は中央都市と言った所だろうか。
アリエスタへと続く路は綺麗に舗装され、商人…旅人、大道芸人や貴族。
沢山の人が歩き、すれ違った。
勿論身なりの貧しい私達には誰も見むきもせず。
…でもその方が好都合。
それにオズが常に変な歌を歌っているから、余計に近寄りがたいかも…。
「こんにちわ。」
ところが、突然シルクハットを被った太めの中年男性に声をかけられた。
どうやら大道芸人らしい。
いつもは警戒して私を気にかけているハイネも、今回は何も言わない。
…この人は大丈夫なのね。
「こんにちわ。」
安心して私が返事をすると、彼は自分のシルクハットを取る。
そしてさっと手を振りかざしただけで…
「すごい!」
中から緑と黄色の体毛を震わせる、とても可愛らしい小鳥が現れて。
「可愛いアナタに。」
そう言って彼は私にその鳥を渡した。