花嫁と咎人
「…え、いいの?」
私の問いに、まるでハイと言わんばかりにウインクすると、先へと行ってしまう大道芸人のおじさん。
「ありがとう!」
とても嬉しくて、私はその鳥の頭を撫でた。
するとピーと言って気持ちよさそうに鳴く。
可愛い!
「おい、何頭の上に花咲かせてんだ、馬鹿。」
すると呆れたような顔をして、ハイネは私を見る。
思わず私は彼の隣に駆け寄ると、小鳥を手に乗せ微笑んだ。
「見て、ハイネ!おじさんがくれたわ!とても可愛いのよ、」
しかし途端にハイネは嫌そうな表情をして、私から顔を逸らす。
「何よ!」
「あんまちっせぇ鳥好きじゃねぇんだよ。」
そしてあっちに行けと言わんばかりに手で払う仕草をした時、小鳥は私の手から離れ、どこかへ飛び去ってしまって。
「あっ!」
思わず頬を膨らませる私。
すると彼は気まずそうに咳払いをし、「悪い。」と言って口を開く。
「それとフラン。さっきの野郎に女ってバレてたぞ。男に向かって“可愛いアナタ”とか絶対言わねぇだろ。…気をつけろ。」
言われて初めて気が付いた。
…確かにそうだわ。
私が男に見えたらそんな事言わないもの。
気をつけなくちゃ。
そう言って歩き方を変える私を見て、再びハイネが溜め息を吐く。
「…だからって妙なガニ股で歩くのはやめろ。」
刹那、オズが腹を抱えて笑い始めた。