花嫁と咎人

彼女は俺達をくねくねと入り組んだ路地を連れ歩き、やがて家の裏に連れてくると…


「…って!」


思い切り俺の肩を掴み、壁に押し付けた。
すると少しだけ壁がへこんで、肩に痛みが走る。

それはとんでもない力で。

こいつ、本当に女かよ…!

そう疑ってしまう程。


「…あんたら、何しに来たの」


そして罵声。


「ここは他所者が来ていい所じゃない!」


訳が分からなかった。
彼女が怒る理由も、意味も…そもそも誰なのかも。


「いや、悪いけど…俺達旅人だからわかんな…」


「――――――、――――――!―――!」


「はあ?」


叫ばれてもまず言語が分からない。
一応これでも10ヵ国程の言語は習得しているが、民族別になってくると流石に限度がある。


「だから…とりあえず話を聞けよ!」


思わず叫んでしまったが、それは逆に相手を激高させてしまったようだ。


「聞いて何になる…!」


と叫んでは、今にも殴りかかりそうな勢い。

おい、助けてくれたんじゃねぇのかよ!
心の中で叫ぶが、彼女には全く通用しなくて。


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