花嫁と咎人
それから暫く、女…ジィンと話して自己紹介を済ませた。
そして分かった事が幾つかあった。
この町は、全ての物資に飢えていると言う事。
なんでも原住民同士が土地や、井戸を巡って今でも争っているそうで。
「…あとさ、ここ。国も手ぇ出せない程荒れ狂ってんの。」
「国も手が出せない…?」
するとフランが前のめりになって彼女に問いかける。
「そ。昔から縄張り意識が強い人たちばっかだから…誰かが入ってくるとすぐに襲撃しちゃってさ。だから今は殆ど無法地帯。」
だからあんた等も襲われたんだよ。
と彼女はやれやれと息を吐いた。
「ま、でも今は物資が欲しいからかな。良くある事だ、余所者が襲われる事くらい。運悪いと身ぐるみ全部剥がされて、全部食べられちゃうからね。」
…食べる?
「骨の髄までぜぇんぶ。」
そう言って、ケタケタと笑い出すジィン。
「ひぃぃぃぃっ」
すると後ろからオズの悲鳴のような物が聞こえた。
…いちいちうるさい奴。
「とりあえず、あの時はたまたまアタシがそこに居合わせてたから良かったけど…何十人掛かりで襲われる時もあるから、気をつけな。」
そしてジィンがそう言った時。
誰かが玄関から入ってきた。
「おう、お帰りアーニャ。」
彼女が手を上げ視線を向けたその先に、一人の少女が立っていて。
ジィンよりも色素の薄い茶の巻き髪が目立つその少女は、白いワンピースを着て、こちらを凝視したままだった。
―…どうやら名をアーニャというらしい。